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天知探偵事務所銀河支局

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天知探偵事務所の支局です

戎光祥出版から出た日下三蔵編のミステリ珍本全集の第10回配本、宮崎惇『21世紀失楽園』の表題作。

初出は1957年8月の『宇宙塵』第4号。処女作の「21世紀失楽園物語」を改題。

単行本『21世紀失楽園』は、1961年6月に私家版で発行。

今回の珍本全集には、この私家版の収録作品をすべて収録した模様。

2037年2月16日5時36分という舞台設定。あと20年後である。

1945年以降、人類の原子力利用がどんどん進み、放射能がどんどん人類の身体を蝕んでいった。

コスモポリタン大学の医学者K・カミヤマ教授は、現代文明を維持するために、人類の改造案を提出し、人類の身体をどんどん機械化していった。

しかし、そのことによって生殖機能を喪失した人類の種を存続させるために、カミヤマ博士は放射能に冒されていない人間を探し出し、特殊人間として隔離して種を保存し、増殖させるという方法に出る。

その特殊人間として生まれた、ただ一人の男子シュペールの物語。

作品発表の昭和32年当時も、広島・長崎の原爆の脅威と衝撃はまだまだ強く残っていたのだろう。

人類の原子力利用と放射能の恐怖に対する批判と揶揄が辛辣に響いてくる作品。

SFではあるが、原爆「後」文学として再評価されてしかるべき作品。

しかも、この放射能汚染の問題に関する言説は、皮肉にも現代の2016年の日本にも有効であろう。

さらに原因は違うと考えられているが、放射能の後遺症として小頭症が出てくるのには驚く。

また、脳だけの機械人間(=カミヤマ博士など)の存在は、1999年のアメリカ映画、『マトリックス』(ラナ・ウォシャウスキー、リリー・ウォシャウスキー監督)との類似性も感じる。もちろん宮崎惇が先だけれども。

いろいろ作者の先見の明に驚かされる作品である。

シュペールが、まるで江戸時代の将軍のように「生殖」を「仕事」とされていることには、悲哀を感じる。

「性」とか「生殖」とかは、もう少し違う状況で取り組みたいものだ(笑)。


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# by kogoroh27 | 2016-11-13 16:11 | 宮崎惇
2015年6月発行の『年刊 日本SF傑作選』(創元SF文庫)で読みました。
表題作にもなっています。

短い作品だけれども、なかなか味のある作品だと思う。

未来的で、機械的な描写の合間に、きわめてノスタルジックで日本的で農村的な記憶が挿入される。

幼い頃、生家の長い廊下で紙飛行機を飛ばした主人公は、大学で航空力学を学んだ後、今は宇宙の軌道ステーションで最先端の仕事をしている。

少年時代、〈本に書いてある通りに作ったつもりなのに、機体はついに両親の寝室にすら届かなかった〉のに、〈今の自分ならあれを折って飛ばせるかもしれない〉と思うところが素敵だ。


弟の飛ばした紙飛行機が地主の田んぼに落ちて、「この土地に落ちたもんは俺らのもんや」と地主の息子にいじめられた過去を見せながら、宇宙では領有権の認識が地球とは反対であると言うところなんかもニクい。


末尾の希望と勇気に満ちた終わり方もとても爽やかで、とても短い掌編であるのに、一人の男の(あるいは一組の兄弟の)成長を感じられる。

始めて読んだ作家さんだけども、とても好感が持てた。

SFは詳しくないので未読だが、矢野徹の「折紙宇宙船の伝説」を踏まえたタイトルのようで、矢野作品の方が気になってきた。

アンソロジー『夏色の想像力』(同人出版物)の方も気になる。







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# by kogoroh27 | 2016-01-10 03:49 | 理山貞二